三増合戦跡地を後にした藤白。
霊が出たり、霊の声がするというトンネルをタクシーに乗ったまま通過したり、自殺の名所のハイウエイ(今では高い鉄のフェンスによって、自殺出来ないようにしてある)を遠目で見たり、タクシーの車内から撮影した。
残念ながら、トンネルを通過するときの動画に霊の声は入っていない。
自殺の名所の写真にも何も写っていなかった。
ただ、一枚だけ。
どこでシャッターを切ったのかわからないが、真っ黒な写真があった。
これが、あとで「不可解」なものとなるのだが、その時の藤白は気がつくことなく、がっかりする。
撮影したばかりの動画や写真を確認する藤白を余所に、タクシーはそのまま山道を進む、
案内人「ここです」
綺麗なトンネルの前で、タクシーが道路わきに停車する。
タクシーを降りると、左側は崖、右側には、こんな山奥に不思議な螺旋階段が……
藤白「え? ここはなんですか?」
案内人「ここは左側は飛び降り自殺が絶えない崖、右側は首つり自殺の多い階段、前にあるトンネルはいわくもないのに、霊が出ると有名なスポットです」
左右は自殺スポット、前に進めば心霊スポット
恐怖の三つ巴スポットである。
懐中電灯を持って、崖を覗き込む。
意外と低いように感じる。
案内人「気を付けてくださいね。たまに、死体発見しちゃうこともあるんで」
鬱蒼と茂った草木のお陰で、高さがまったくわからない。
こんなところに飛び降りても、即死できる可能性は少なさそうなのに……
何故、ここが自殺スポットなのかは謎である。
だからこそ、逆に怖いのかもしれな。
だってそうでしょう?
自殺した霊は、同じように自殺する人を呼ぶといいますから──
なんとなくゾクリとしたものを感じながらも、振り返ると、螺旋階段が。
こちらの階段、何故、こんなところに……?と思うかもしれませんが、その理由は、ここではちょっと触れられません。
ただ、この階段がここにある理由を知った時、「ああ……もしかしたら……」と思う人も多いことでしょう。
目の前にある心霊トンネルには、特になにも感じることもなく。
タクシーに戻ろうとした時、背後からゆっくりと進む車が二台。
車のナンバーからして、地元民っぽい。
車内にいる人達が、伺うような顔をして、こちらをジッと見ながら、横を通り過ぎていく。
藤白「なんか、感じ悪い視線ですよね」
案内人「あー……地元の人なのかもしれませんね。ほら、ここ。自殺スポットなんで、藤白さんが自殺するんじゃないかって、心配していたのかも」
いやいや。
自殺するのに、わざわざタクシーなんかで来ないでしょう!!
と、ツッコミを入れようとしたものの、暗闇ではタクシーだと分からなかったのかもしれない。
それとも、自殺者を発見して、慌てて崖を覗き込んでいる人なのかと勘違いされたのかもしれない。
なんとなく居心地の悪い気持ちになって、その場を後にしたのだが……
帰宅してから、撮影した写真を整理していた藤白。
タクシーの車内から撮影したと思われる「真っ黒」な写真を見て、ふとあることを思い出す。
藤白「そういえば。こういう写真で彩度を強くしたり、明るさを明るくしたり、白黒反転させたりすると、変なものが写ってたりすることがあるんだよね」
藤白、写真をアプリで加工する。
彩度や明るさを変更していく。
すると、何やら変な形が徐々に浮かび上がってきた。
藤白「なんだコレ?」
ゾウリムシやダンゴムシのような形だが、何を意味しているのか分からない。
ただ単に、デジタルカメラ特有のモノなのかもしれないが……
左右対称のように見えて、そうではない。
幽霊の正体見たり枯れ尾花
原因がわかれば、たいしたことのないものかもしれない。
けれど、不可思議なものは、不可思議なものとして捉えておいた方が面白い。
なんでもかんでも解明できてしまったら、好奇心が刺激されない。
この世は沢山のミステリーに溢れている!
そう思って生活した方が、人生はより豊かなものになる。
藤白は、この「謎」への深追いはしないことに決めたのだった。