空襲の時に、電車が爆撃にあい、多くの方が亡くなったと言われる線路。
この周辺の地域では、玄関の扉や、家の襖に血の跡が残る家もいまだにあるという噂。
それは何故か?
当時、物資がなく、遺体や怪我人を運ぶタンカすら品薄だった。
それ故に、玄関の扉や家の中の襖をタンカがわりに使用したそうだ。
線路の奥に見えるトンネルからの悲鳴。
線路周辺を彷徨う幽霊。
夜な夜なこの辺りを徘徊する戦死者たちの姿は、多くの方が目撃しているという。
で
す
が
このスポットも、線路から少し離れた場所にタクシーを停めて、訪れたわけなのですが……
実は藤白。
タクシーを降りた直後、まったく別方向へと足を向けていたんですよ。
案内人「藤白さん。そっちじゃないです。こっちです。この坂を下った踏切のほうです」
藤白「あ? そんなんですね」
そんな会話をしながら、線路に向かいました。
心霊スポットである線路や踏切では特に何も感じることはなく、写真だけを撮影する。
観光スポットのように案内人が、懐中電灯の明かりで照らしながら
「あちらに見える家の玄関の扉にいまだ、血が沁み込んだ跡があるんですよ」
「ほら。あの奥にあるトンネルですよ。あそこから何人もの霊が……」
などと、細やかな説明を聞く。
だが、藤白が気になっているのは、別の場所である。
タクシーへ戻る途中で、案内人がタクシーとは別の方向へ足を向ける。
案内人「実は、こちらに……」
案内人が歩き出した方向は、藤白がタクシーを降りたときに、向かおうとしていた方向──
つまり、藤白が気になっている場所である。
案内人「こちらには立ち入り禁止のトンネルがあるんです。実は、このトンネルの手前にお堂がありますでしょう?この場所で、女性が自殺したらしいんですよ」
藤白「……これ見てくださいよ」
ここでも左側だけ鳥肌がたつ。
案内人の顔が引きつる。
案内人「やっぱり、ここ。おかしいですよね? この間案内したグループの中に、霊感がある人がいたんです。その人も、こっちは嫌だって言って……」
藤白「なにか見たんですか?」
案内人「いいえ。その人も藤白さんのようにいきなりブワッと鳥肌が……」
藤白「なるほど……ちなみに、このお堂、結構新しいものですよね? もしかして、女性が亡くなったあとに?」
案内人「時期はどちらが先かわからないんですよ……」
藤白「自分的には、どちらかというとお堂よりも、こっちのトンネルの方がなんとなく嫌な気配というか、空気が……ねえ……」
その時、真夏だというのに冷たい風が頬をかすめた。
風は、トンネルから吹いてくる。
しかし、トンネルは作っている最中に事故があったのか
それとも、作られたあとに事故があったのかは不明だが、太い木の柵で中には入れないようになっている。
藤白「ここ。夜は近づかない方がいいかもしれませんね」
さらに泡立つ左腕を見て、小さくつぶやく。
それを見た案内人が小さく悲鳴をあげた。
案内人「つ、次。次行きましょう!」
ここで何があったのかはわかりません
ですが、立ち入り禁止のまま放置されたトンネル
その手前にあるお堂が意味するものとは……
なんとなく、不気味さを感じる人は多いのではないでしょうか?
きっと、ここも数年後には有名な心霊スポットになっているのかもしれない。