麻布出張時によく使用しているビジネスホテルがある。
少々古いが、清潔感はあるし、得意先からは徒歩10分圏内なので立地的にもいい。
今までは、特に何も問題はなかった。
け
れ
ど
2023年9月
今回は違った。
チェックインして部屋に入った瞬間
藤白「さむっ!!!」
エアコンがすでについている。
室温の設定を見ると、23℃&風量強風になっている。
さすがに、このまま部屋で過ごしたら、風邪をひく。
25℃、風量自動調整に切り替えた。
だが──
深夜、あまりの寒さに目が覚める。
藤白「エアコン、切っておくか……」
ベッドから出て、少し離れた場所にあるテーブルへと歩く。
リモコンを手にして固まった。
藤白「え……23℃? 強風?」
この日は自分の設定ミスだと思い、首を傾げつつもそのまま寝たのだが……
翌日は仕事をして、その後、一人で焼き鳥屋で呑んで部屋に帰った。
またしても、部屋が寒い。
藤白「なんでまた23℃設定なんだよ」
悪態をつきながら、この日はエアコンを切った。
風呂に入り、早々に寝る。
だがしかし……再び深夜に寒くて目が覚めた。
時計を見れば2時だ。
しかも、エアコンの音がしている。
藤白「嘘だろ?」
再び、ベッドから出てテーブルの上にあるリモコンを手にした。
またしても、23℃強風。
藤白「どういうことだ?」
リモコンの設定をみるが、おやすみ設定も予約設定もされていない。
さすがに二日連続は気持ち悪い。
しかも、今回は四泊五日である。
翌日、一緒に仕事をしている担当営業に尋ねた。
藤白「なんか、このホテル。おかしくない?」
営業「え? 毎年泊ってるじゃないですか」
藤白「まあね。でもさあ、毎晩、寒くて起きるんだわ」
営業「エアコン切ればいいでしょ?」
藤白「切っても、夜中に寒くて起きると、エアコン23℃設定でガンガン効いているんだよね」
営業「……それって……でるんじゃ?」
藤白「でてもいいけど、嫌がらせは嫌だよね。対処しようがないもん」
営業「あ……そうきます?」
そんな話をした、その夜も、次の夜も毎晩2時に寒くなって起きるという負のループ。
結局、そのホテルでは幽霊がでるという噂も、殺人事件や自殺があったという話もなく……
ただ、おかしいなと思う点として。
出張初日のお昼に、新宿にある墓地と墓地の間にある道を通ったんですよねえ……
もしかしたら、そこにいた霊をお持ち帰りして、イタズラされたのかもしれません。
なぜなら──
帰りの新幹線に乗る直前、とても強い線香の匂いがしたんですよね。
しかも、その場で白い煙のようなものが目の前でフワッと現れたかと思うと、そのまま霧散したんです。
もしかしたら、藤白についてきた霊は、都内から離れるのを自ら拒んだのかもしれません。
(というより、自分が供養されている墓地から遠く離れた場所には行きたくなかったのかも)
とはいえ、藤白が軽い風邪をひいたのは言うまでもありません。(寒さ故に)