「連鎖する霊」の話を聞き終えた藤白。
なんとなーく嫌な予感がし、同じ会社の営業や、得意先の人たちと夜中まで飲みました。
ええ。
だって、お酒を飲めば、朝まで爆睡できるじゃないですか。
なので、翌日の仕事に差し支えのないギリギリの深夜2時まで飲んで解散しました。
ホテルに入ってすぐ。
シャワーを浴びて、速攻で寝たのを覚えています。
ベッドに入って、即爆睡。
そのあとの記憶といえば、急に寒くなって目が覚めたことでしょう。
季節は夏。
エアコンをガンガンにかけていたので、そのせいだと思いました。
で
す
が
エアコンの温度を調整しようと思っても、まったく体が動かない。
しかも、覚醒すると同時に足元から
ぶわぁぁぁぁぁあっ
と、皮膚が粟立つのを感じました。
藤白(ヤバい)
脳裏に危険信号が点滅します。
どうにかして体を動かそうにもピクリとも動かない。
ただ、自分自身の荒い呼吸と、心臓の音だけがやけに響いていました。
藤白(このままじゃ、アイツがくる)
何故か、得意先の人が話していた女の幽霊が頭を過ります。
それどころか、その女の顔までも鮮明に頭に浮かぶのです。
長い髪
土気色をした皮膚
頰はこけ、目は落ち窪み、開いた口は真っ黒な闇──
そんな女性が思い浮かび、さらに背筋が寒くなる藤白。
途端、布団がぺろりと持ち上げられた感覚がし、ヒンヤリとした空気が足元から体に流れてくる。
それから
ズルリ──
ズルリ──
ズルリ────
足元からゆっくりと何かが体の上を這ってくるのを感じる。
ズシリとした重み。
そして、人とは思えない冷たさ。
どう考えても『ヤバいモノ』でしかない。
逃げようにも、金縛り状態で動かない。
それは、じわりじわりと這い上がり
いよいよ藤白の胸元まで這い上がって来た。
布団がふわりとトンネル状に盛り上がる。
胸元と布団の間に空間ができた。
その隙間から不気味に覗く二つの目。
目と目があった瞬間、青白い手が藤白に伸びてきた。
みぃぃつぅぅけぇぇたぁぁぁぁ……
藤白「ちがう! お前が探しているヤツは別の人間だ!」
ばっちり目と目を合わせてハッキリと「違う」と告げる。
すると、女は恨めしそうな顔をして「どこにいるのよ」と呟いた。
藤白に出来ることは「違う」ということだけだ。
必死に「違う」と言い続けているうちに、女は消えた。
『じゃあ、手伝ってね』
という言葉を残して──
実は、この話。
某小説投稿サイトに実話怪談として書いたことがありまして。
そうしましたらね。
その話を読んだ人、数名から言われたんですよ。
藤白さんの書いた『連鎖する霊』
アレを読んだ翌日(もしくは三日以内)に
まったく同じ体験をしたと────
この女性の霊。
日本各地、どこにでも出没するようでして……
連鎖
というよりも
野良霊
なのかもしれません。
つまり、『一緒にあの世につれていく誰か』を探している以外
すでに、なんの縛りもない霊だと思うと……結構、ヤバいタイプだと思うのです。
これを読んでしまった方
もしも、金縛りにあったり、女性の霊が出てきてしまったら……
『あなたの探し人は私(俺)じゃない』
と、はっきりと言ってくださいね。
でないと、彼女に取り込まれてしまうかもしれません。