以前、お話した「首つり自殺」のあった神社のすぐ近くに、小さな公園がある。
秋から春にかけては、綺麗に整備されているものの、夏になると、草がボーボーに生えて、足を踏み入れることができないほどだ。
しかし、季節を問わず、この公園には、まったく人がいない。
藤白が通りかかる時間が悪いのだろうか?
いいや。
藤白の家の近くにある公園は同じ時間帯に通りかかっても人がいることのほうが多い。
大違いだ。
何故、人がいないのか。
その理由はわからない。
誰かが自殺したとか、墓地を埋めたとか、そんな噂もない。
ただ、周辺に住んでいる元同級生や、元同級生の親に聞くと
みんな──
「なんか……入りづらいんだよね」
「なんか……いやな気配がするんだよね」
と、いうだけだ。
けれど、藤白は知っている。
ある夏の夜。
犬の散歩をしていた時のことだ。
藤白の膝丈くらいの草が公園にはびっしりと生えていた。
街路灯で照らされていた公園内には、誰もいない。
しかも、風も一切ない日のことだった。
急に愛犬が公園に向かって唸りだした。
藤白「どうした? 猫でもいるのか?」
愛犬を宥める。
すると、公園内の草がザワザワザワッとさざ波のように揺れた。
ふと顔をあげると、草の間から、白くてにょろにょろうねうねしたものが、いくつも揺れていた。
そう──まるで都市伝説で有名な「くねくね」のように。
だが、その白くてにょろにょろうねうねしたものは、どんどん長く伸びていく。
そして、何故か、藤白のほうへと伸びてくるわけでもなく、西の方へと伸びていた。
藤白「どういうことだ?」
愛犬が凄まじい勢いで吠えた。
途端、にょろにょろうねうねは消えた。
その直後、けたたましいサイレンが響く。
消防車の音だ。
あとからニュースで知ったのだが、その場所から西にある港で大規模火災が発生していたそうだ。
あの白くてにょろにょろうねうねしたものは、もしかしたら、災害を予言していたのだろうか?
予言ではなく、ただ、にょろにょろうねうねしているだけだったのかもしれないが……
マンションや住宅の多い場所であり、犬を連れて散歩する人も多い場所にある公園だというのに
遊ぶ人どころか、ベンチで休憩する人も、犬を連れて入ろうとする人すらいない。
視えなくても「何か」がいることを、みんな察しているのかもしれない。