もう何年も前のことだ。
ネット上に「降霊機」というサイトをみつけた。
藤白「へえ……。小さい頃はこっくりさんや、ウィジャ盤が流行って、降霊術をみんなでやったけど、今じゃ、簡単にパソコンで呼べちゃうんだな」
面白そうだったので、ソフトをダウンロードした。
それからソフトを起動させると、恐山の画像が表示された。
なんとも不気味は音楽も流れている。
しかも、不気味な文言が流れている。
あとから聞いた話だと、この恐山の画像には沢山の心霊が写り込んでいるとかいないとか──。
藤白「降霊しますか……って、そりゃあ「はい」だろ」
選択肢ボタンの「はい」をクリックする。
途端、「降霊中」の文字が現れた。
文字が点滅しながら、画面のあちらこちらに現れる。
そのうち「来ています」「強い霊気を感じます」「降りてきています」という言葉に変わっていく。
そして──
「母親の霊です!」
画面に大きな文字が現れた途端、いきなりパソコンがシャットアウトした。
真っ黒な画面に青白い顔が映った。
藤白「うわ!」
驚いた藤白だが、すぐにパソコンの画面に映ったのは、反射した自分の顔だと思い直す。
それからパソコンを再起動させる。
とくに問題はない。
もう一度、降霊機をやってみることにする。
同じように、不気味な音楽が流れる。
文字が点滅するのも同じだ。
「降霊しています。しばらくお待ちください」
「強い霊気がきています」
「兄弟のおばけです」
「降りてきました」
藤白には姉はいるが生きている。
兄弟はいない。
藤白「やっぱり、これ。ジョークサイトか」
苦笑する藤白は、ここでシャットダウンされるのだろうと、身構えた。
ところが──
「除霊します」
「除霊します」
「除霊中です」
「しばらくお待ちください」
「除霊は無事に完了しました」
という形で一連の降霊は終わったのだ。
藤白「……待って。じゃあ、さっきのシャットダウンって?」
ここで藤白はハッと気がついた。
降霊機を行った時は、母親が亡くなった一年後ぐらいだった。
そして、黒くなったパソコンの画面に映った青白い顔。
その顔は驚いた自分の顔ではなく、優しく、いつくしむような母親の顔に似ていたような気がした。
もしかしたら、この降霊機。
何十回に一度は「本物」を呼び寄せるのかもしれない。