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麻布Oでの怪異

 麻布出張では、必ず泊まる某ホテル。

 このホテルに宿泊すると、必ず「2時」に目が覚める。

 それは、早く寝ても、夜遅くまで飲んだあとでも変わらない。

 急に目が覚め、時計を見ると、必ず2時だ。

 しかも、毎年毎年。

 このホテルに泊まる四日間連続で起きる。

 

 という話を昨年したように思う。

 

 そして、線香の臭いと共に、何かが消えたという話もした。

 

 個人的に、あまり怪異の話は、同僚にしないのだが、今年はここ五年以上、一緒に麻布の仕事に来ている同僚にも、藤白の身に起きる怪異を話すことにした。

 

藤白「毎夜、2時に目が覚めるから眠いんだよね」

 

 軽い気持ちで言った藤白に、同僚はハッとした顔をする。

 

同僚「実は……自分は2時15分なんですよ……」

 

 麻布自体、もともと七不思議がある場所だし、1キロほどのところに幽霊坂もある。

 霊がでてもおかしくはないかもねと、笑い飛ばしながらも、藤白。

 あることに気がついちゃったんですよね……。

 

 このホテルで、たまに壁に白い光がフワフワっと点いたり消えたりすることがあっても、「あ、窓から差し込む車やビルの光か」と思って、無視して寝ていたこと。

夜中までパソコンをしていると、急に「カツンカツンカツンカツンッ」とコンクリートや大理石の上を歩く、女性のピンヒールの音が廊下から響いてくることが多々あったのですが……

 

 藤白は真っ暗な部屋で寝たいタイプなので、電気を消すのはもちろんのこと、カーテンもぴっしりと閉めて寝る。

 そして、このホテルの廊下は絨毯が敷いてある。

 つまり、壁にぼんやり光っては消える光も、ピンヒールの音も、あり得ない。

 しかも、そのピンヒールの音。

 よくよく考えてみると、廊下というよりも、非常階段から聞こえていたような……。

 

藤白「Yって、何階の部屋?」

同僚「7階」

藤白「わし、5階なんだけど……もしかして、各階に非常階段使って、客室まで宿泊客を起こすっていう悪戯をしてるとか?」

同僚「……ナニソレ。地味な嫌がらせっすね。心霊体験っていっても、まったくおもしろくもなんともないじゃないですか」

 苦笑する同僚。

 妙な気配すら感じさせないくせに、ちゃんと自己主張をしていた「霊」(怪異)の存在。

 

 あまり怖くはないので、怖がりなのに、心霊体験をしたい方にはお勧めなホテルなのかもしれない。